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August 24, 2005

絵本『こそだてゆうれい』

時は慶長四年(1599)、うだるような蒸し暑い夏の日々は過ぎ、朝夕は幾分涼しさを感じる長月(陰暦の九月)にさしかかろうというころのことです。 六道の辻あたりに店をかまえる飴屋の主人惣兵衛は、その日の帳締めを終えて表の潜り戸に錠をおろしました。 そして、夜もふけたので寝床に入ってウトウト・・・(略) ・・・戸をトントントン、トントントン・・・と叩き「遅うにごめんやす」とかすかに女の声がするのです。 ・・・(略)・・・惣兵衛は背筋がふるえるのを覚えました。その女は力無げに口を開き、蚊の鳴くようなか細い声で「夜分恐れ入りますが、飴を一文がことわけておくれやす」・・・

上記、改訂版『六道の辻あたりの史跡と伝説を尋ねて』より引用。

上の子が幼稚園に通っていた頃、夏休みにお薦めの本として園から紹介された絵本を購入しました。

『こそだてゆうれい』さねとうあきら・文 いのうえようすけ・画 教育画劇/日本の民話絵本

この絵本では時と場所は限定されていません。これに似たお話は「あめかいゆうれい」として日本全国で語り継がれている民話として残っているようです。
“ゆうれい”が出てくると言っても恐ろしい話ではなく、いのうえようすけさんの絵も昔話らしいほのぼのとしたイメージなので小さいお子さんも恐がらずに見てくれると思います。
この本はうちのシュジンの十八番です。別に演技するわけでもなく淡々と読むんですが、それが恐いところは恐いらしく子ども達はお父さんにピッタリくっついて聞いてました。お話が終わると「ええ話やなぁ」と子ども達の感想はいつも同じ言葉でした。
お話の内容は母親の愛みたいなとこがあるけれど、父親が読んでくれるほうが押し付けがましくならないのか素直にイメージして感動に浸り眠りにつくようでした。
一時、「またかぁ」と毎晩のリクエストに、ソラで読めるようになっていたシュジンでした。

絵本のお株を父親に取られた私は母として何を思ったか、地蔵盆もすんだちょうど今時分、下の子を祖父母に預け上の子と一緒に子育て飴を買いに出かけました。
今なら自転車でもさっと行けるのですが、バスに乗って行ったのでとりあえず河原町松原で降りました。

そこから向かっていく方向は少しずつ上り坂になっており結構距離もあるので強烈に蒸し暑い中、幼児には大変キツイ道のりだったろうと思います。
小さな水筒ひとつのお茶を少しずつ分け合って飲みました。飴を売っているお店についた頃にはお茶はからっぽになりお店で試食の飴を頂いた時、「お母さんにもハイ」っともう1コもらってくれました。そしてニコリとして「飴さん買えてよかったね」とも言ってました。思えば、この絵本に出てくる母は死んでも子供を育てるというもので母性愛の話のはず。
我が娘はちいさい頃から、お母さんの楽しみにもけなげに付き合ってくれ、いつでも「お母さん大丈夫?」と気遣ってくれる優しい娘です。
まったくどっちが母親だかまるで逆。
「幽霊子育飴」を食べてゆうれいのお母さんにあやからなければいかんなと反省。今でも甘えてるのは私のほうみたいで反省してないな、すんません。
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いつもはこの飴が買えるのは、“木村茶舗”さん(松原通東大路西入ル)ですが毎年8月7日~10日の“六道まいり”<お精霊迎え>の日には露店も出るらしいとのことです。


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「幽霊子育飴」の記事はSt.KYOTOさんでも<8/20に>紹介されています。8月に入っての記事には六道まいり、お精霊さんむかえについてもいろいろ詳しく書いておられます。
またSt.KYOTOの一匹狼★NOBさんから、らくたびさんのブログはんなりエッセイでも紹介されていることも教えていただきましたので、そちらへもどうぞ。

今このあたりは、ドラマ『義経』ゆかりの観光名所として賑わっています。平家一門の邸があったところでもあり、六波羅蜜寺の宝物館には建礼門院徳子愛用品など平家関連の寺宝も特別展示されています。
壇ノ浦の戦いでわずか8歳(今でいうと6歳)で入水し亡くなった安徳天皇が生まれる際に、平家が安産と男子誕生祈願のために作らせたと伝わる6体の泥塔なるものもあるそうです。安徳帝の産湯の井もこのあたりにあると聞きますが、栄華を極めた平家も壇ノ浦で終焉を迎えます。
様々な歴史の中の戦いを京都の街も数多くながめてきたということもあり、街のいたるところに魑魅魍魎が住み魔物が巣くっているような京都の怪異な世界をこのあたりにも感じることができます。
六道珍皇寺さんもそういった話に尽きませんが、三途の川跡なんてのもあるらしいですし、現世と冥界との接点のような所としていろんな伝説のある地でもあります。
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「幽霊子育飴」の“木村茶舗”さんから200mほど西へ行くと松原通に面して子育て地蔵として親しまれている「西福寺」がありますが、ここでは(8/7~10やはり六道さんの頃)に寺所蔵の『地獄極楽絵』を見せてくださいます。
子供の頃いつもこれを見せられては「地獄はこわいとこ、悪いことして死んだらこんなんなる」と言うて聞かされました。
夜おしっこにいけなくなってしまうほど恐い恐い絵です。うなされます。でも恐い世界のことをこのようにして子ども達に教えていったんでしょう。今では地獄といっても「なーんもこわない」子供ばかり。
ほんとうに恐いのは人間なのかもしれません・・・絵本『じごくのそうべえ』は実はそういう話なのかもしれないな、とちょっと思うことあります。(冒頭の話の飴屋の惣兵衛は偶然でしょうね)

参考文献として使わせていただきました。(冒頭の部分はこちらから引用)
改訂版『六道の辻あたりの史跡と伝説を尋ねて』加納進 著 / 京都の史跡を訪ねる会
室町書房  900円
この本は、「幽霊子育飴」の“木村茶舗”さんで買い求めました。

追記* * * * * * * * * * * * * * * *
このはなみ★録 では、この後  『幽霊子育飴』 について(新店舗・ストーリーテリング・ジュニア京都検定)にも、書いています。 2006.5.10 『幽霊子育飴がここに・・・』 へもどうぞ。

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Comments

この本の話知っています。
お墓の中から、産まれた子供の為に
毎夜飴を、買いに来る 店のものが、
可笑しいと思い後を付けて見たところ
墓の中に消えた 墓の中から赤子鳴き声が
聞こえてきた赤子を助け出した 子供思いの母親の話でしょうか?
今の母親は、子供に手をかけたり、虐待 パチンコしたさに子供を車の中に置きっぱなしで、殺してしまったり時代が違いますね。
(全部の人がそうではありません)
昔のいいところは 残しておきたいですね。

Posted by: まっこちゃん | August 25, 2005 at 08:10 PM

>様々な歴史の中の戦いを京都の街も数多くながめてきたということもあり、街のいたるところに魑魅魍魎が住み魔物が巣くっているような

先日、図書館で借りてきた本 「おばけのひっこし」さがらあつこ文、沼野正子絵、福音館書店 も、そういえば京都の街(平安京)のおばけのお話でした。歴史あるところには、戦いが多い、戦いが多ければ、死んだ人も、おばけも多い、ということですよね。

「子育飴」の話はもちろん、その名前、存在さえも初めて耳にしました。‥地蔵盆などの行事といい、京都はとっても奥が深いなあと、このはなさんの記事を読むたび思います。

Posted by: ruca | August 26, 2005 at 04:13 PM

『こそだてゆうれい』の絵本、読んだことありますよ。絵も文章もすっと入ってきて親しみやすい印象でした。私が気に入っちゃって何度も子ども達に読み聞かせました。
私はあの絵本の舞台は信濃の国あたりかと思い込んでたんです。なんだか山深い国のような気がして。全国に伝わる説話とのことですが、舞台を京都として考えると絵本の見方が変わりますね。
それにしても、このはなさんのご主人はなんてステキなお父さんなんでしょう。うちの主人は私が具合悪い時にしか読み聞かせを変わってくれませんよ。(ぷんぷん!)

平家物語に出て来る六波羅・・・私は訪ねたことない(と思います)が、是非そのうち行ってみたいです♪

Posted by: 琴音 | August 26, 2005 at 11:01 PM

まっこちゃん さん へ
  全国各地で語り継がれているお話で少し形が変わっている
  ものもあるようですが、(飴でなくお餅だとか)母親の深い
  愛情を語っているお話だと思います。身勝手ばかりの今の
  世は恐ろしいのは幽霊ではなく、人間かもしれませんね。

rucaさん へ
  「おばけのひっこし」おもしろそうですね。これも読まなくては。
  京都は名所旧跡、寺社にはいろんな伝説などが伝わってて
  お話に事欠かないかもしれませんね。長い年月の間に
  作り上げられてしまったものも多々ありそうですが。
  この子育て幽霊がこのあたりの話として残った背景の
  ひとつに“高台寺”が近くにあるということもあるようです。
  「墓から救い出された赤ん坊は近くの寺にひきとられ、
  後に高僧となった」という話になっています。
  “高台寺” こうだいじ→こおだいじ→こを、だいじ・・・
  すごい、こじつけになってきました。
  
琴音 さん へ
  京都だけでもこの赤子塚伝説が4~5ヶ所あると
  いわれています。全国各地でも語り継がれているお話
  のようですし、その土地ならではの脚色もありそうで
  おもしろいかもしれませんね。
  京都は歴史を実感する所としては話に事欠かないと思います。
  いろんなネタ探しにきてください!
  そうそう、今回お盆にいらした事も読ませていただいてます。
  またおじゃまします。

Posted by: このはな | August 28, 2005 at 04:38 PM

Thanks for the auspicious writeup. It actually used to be a entertainment account it. Look complicated to far added agreeable from you! However, how could we be in contact?

Posted by: Stacy | September 02, 2014 at 05:49 AM

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